今年1月、5年ぶりに「高血圧の治療ガイドライン」が改定され、「家庭血圧」の降圧目標値、糖尿病などへの薬の一部見直しがなされた。食事・運動の大切さのほか、血圧は低いほうが血管への負荷が少なく、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、心肥大、脳動脈瘤破裂、大動脈瘤破裂、腎臓病、眼底出血などの予防になるため、「家庭血圧」の目標値をより下げることになった。 「診察室血圧」、家庭血圧の目標値はそれぞれ若年者・中年者で130/85、125/80、高齢者は140/90、135/85に改められ、「家庭血圧」の目標値がさらに重視されたことになる。
家庭血圧の測定法、注意点として高血圧薬を服用する患者さんは、上腕に巻いて測るタイプの血圧計を使用し、朝夕の血圧を記録して医師に見せ、その後の記録、測る時間帯、回数について相談すると良い。血圧計の値段は数千円のものでも十分である。薬局、電気量販店などで売っている。指で測るタイプは変動幅が激しくて、患者さんに向いていないので注意を要する。
朝の血圧測定の注意点は、起床後1時間以内・排尿後・服薬前・朝食前・座位1ないし2分安静後に1回以上(1ないし3回)測定、各々記録し、医師に見せてから測る回数を決めると良い。夕の血圧測定は就寝前が推奨されているが、飲酒後・入浴後は血圧が下がるので、帰宅後安静時間が十分取れていれば、夕食前・飲酒前・入浴前を選んでも良い。
血圧の変動は一日を通じても朝・昼・夜、時々刻々と変わり、3回連続測定しても変動するものであり、その変動が激しい方は医師に相談することが大切である。診察室ではいつも高く、家では正常の「白衣高血圧」(治療不要)、それとは逆で、医師の前では正常血圧、家では高血圧の「仮面高血圧」(治療要)の存在が知られている。 日常活動の中での血圧の変化は、心臓の収縮期血圧(高い方の血圧)で+70から-30、心臓の拡張期血圧(低い方の血圧)で+50唐-20まで変動した研究報告がある。特に、排便・排尿・ベッドからの起立時の血圧変動は激しいことがある。朝方にベッドから起立して血圧30も下がるとめまいの原因となるが、その逆に70も上の血圧が上がる時もあり、それもめまいの原因となるので、めまいが起きたときは血圧を測り、同時に脈の数を記録し、医師に相談すれば適切な対応、薬の処方変更など検討してくれる。
血圧は1年を通じても変動する。夏の暑さは血圧を低くし、冬の寒さは血圧を上げる。その血圧の変動幅は人によって相当に異なり、これから本格的な夏に向けて低血圧になる方もいるので、血圧を記録して、薬の加減について医師に相談すると良い。高齢者は夏に水分不足になると血圧も下がり、血液が濃縮して脳梗塞になりやすくなるので注意が必要である。血圧の下がりすぎを発見するためにも家庭血圧の測定は欠かせない。